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ソングライターとして多くのアーティストに楽曲提供もしているシンガーソングライター、B.Howardのデビューアルバム『Genesis』を御紹介。僕は全く知らなかったBrandon HowardことB.Howard、これまでにもNe-Yo「Ain't I Gotta Tell You」をはじめ、Marques Houston、Ginuwine、Chris Brown、Lupe Fiascoと錚々たる面子にソングライト提供していたそう。そして彼の祖母はThe CaravansのJosephine Howard、母はSide EffectのMiki Howardと、完璧なまでの音楽サラブレッドだそう。これだけでもかなりの鳴り物入りなのに、その端正な顔立ちが似ている事からMichael Jacksonの隠し子だなんて囁かれたりと、もう話題に事欠かない大型新人です。
それでは気になる内容を簡単に御紹介しますと……まずは煌びやかながらどこかまろやかな輝きを放つダンスチューン「Dancefloor」で幕開け、この曲はB.HowardとあのJames Poyser、Sidney "Speakerbomb" Millerが共同で製作を担当。そしてもっと凄いのはDrumsをAhmir "Questlove" Thompson、ArrangedにMichael Jackson『Off The Wall』を手掛けたBenjamin Wrightまで参加したという最強バックアップ。確かにこの曲の持つ心地良くドリーミーな浮遊感溢れるディスコ風味曲は、Michael Jacksonが『Off The Wall』で創り上げた世界観に通じるものがあります。とにかく滑らかでキラキラ眩しいミラーボール曲で、B.Howardの細くしなやかなファルセットフックにも胸がキュンとする一曲。ピコポコとサイバー光線を妖しく放ちながら駆け抜けるソリッドな近未来曲「Super Model」、製作はB.HowardとRay "Ra Charm" McCulloughが共同制作で、Back VocalにKaitlen HowardとGenevieve Jackson(Randy Jacksonの実娘)&VocorderでTeddy Rileyが参加(!)。宇宙っぽい冷たいシンセサイザーの波の中で、B.Howardのサイボーグチックな裏声フックと女性二人のヴォーカルが色っぽく絡み合うロボット曲。B.HowardとInfinityが共同制作(VocorderにTeddy Riley)の「Addict」も完全にサイボーグ仕様の電気仕掛けグルーヴが最高にクールなダンスチューン、単調なシンセループがどこかレトロでそれがまたオモシロイ未来感覚を生んでて病み付き度高し。「Electric Lights」はTeddy RileyとB.Howardが共同で製作、客演には女性シンガーKamilahが参加。小粒のダイヤとハンドクラップが散りばめられたスーッと抜ける清涼チューンで、B.HowardとKamilahの高く澄んだ歌声が昇天しながら溶け合う透明曲。時計の針のチクタク音をなぞりながらビュイビュイと電子音がうねる「Finally」はB.HowardとRamon "Reo" Owenが共同制作(Additional ProductionでTeddy Riley)、最近流行のテクノっぽいノリのブライトチューン。同じくB.HowardとRamon "Reo" Owenが共同制作(Stiring ArrangedにBenjamin Wright)の「Once Again」は、ちょっぴり曇った電子鍵盤が流麗ながらマイナー調のメロディを奏でる悲しい失恋曲。ドドドドドドドドと震える様に鳴る心臓の鼓動にも似たビートとか、一聴するとR&BではないColdplayっぽい脆くて繊細なメロディが美しく儚い、“また僕は、破れた、恋に破れたのさ……♪”と繰り返すフックも耳に残るドラマチックな一曲(余韻)。「Take It Slow」はB.HowardとSidney "Speakerbomb" Millerが共同製作、The-Dreamっぽいエコーがかった奥行きのあるメルティーなとろける電子曲が悩ましくもキュートなスロウジャム(快感)。しんみり切ない静寂の中で深々とB.Howardのヴォーカルが響き沁みる哀愁漂うスローバラード「Flashback」、B.HowardとQuannah Hicksの共同制作。この曲ではDrumsにMichael Jackson「Beat It」「Thriller」を担当したNdugu Chancellorが参加。壊れた愛を元通りにしたいと泣きそうな声で切々と歌い上げるB.Howardに胸を打たれる(涙)、ただただじわじわと未練と後悔と愛情が溢れて流れ消えてゆく美しさ(溺)。B.Howardが単独製作した「She's Got A Man」、細くカラフルで眩い曲線を描くシンセに乗せてB.Howardの甘くしとやかなヴォーカルが揺らめくミッド。不気味な笑い声で始まる「Spend The Night」もB.Howardが単独製作で、この曲はモロにNe-Yoマナーが光る爽やか甘酸っぱいミッド、軽やかでクネクネ曲がったシンセラインながらも力強い打ビートが骨太に仕上げている一曲。B.Howard製作(Additional KeysでJames Poyser)のキラキラと柔らかく夢見心地なトラック「Crush」、ここで途中に聴かせる裏声ハミングはまるでMichael Jacksonっぽい滑らかさで耳に吸い付く、ここまで穏やかでドリーミーなのにも関わらず詩の内容は“僕らは恋に落ちない♪”と女性をフる曲。大地の息吹と鼓動を感じさせる民族音楽の如き「Ananda」、平和を願ったアフリカ音楽っぽいアレンジに胸踊る躍動感溢れる一曲。Chris "TEK" O'RyanとB.Howardが共同制作(VocorderにTeddy Riley)の「Killah」、浮気がバレて彼女に撃ち殺されるという詩を歌った衝撃の幕切れ曲。シンセを使いながらもアコースティックな弦音でブルージーに仕上げた渋スロウ、B.Howardの繰り返すフックがじわじわと浸透し病みつきになってしまうラストソング。またこの曲の後には隠し曲としてB.Howard製作の「Just Not Giving Up」も収録、こちらも神秘的な琴音に乗せてB.Howardの甘くしなやかな歌声が優しく包み込む、恋人に素直に謝って仲直りする愛に満ちた美しいミッドチューン。
僕個人としては触れ込み程にMichael Jacksonを思わせる事も無かったかなぁと。それよりも限りなくNe-Yoに近い気がします、と言っても酷似している訳でなくNe-Yoとはまた違う歌声だし、B.Howardなりの世界観も構築されていてすごく良かったと僕は思います。やはりソングライターだけあって、自分で書いた曲は自分が巧く表現できるのかもしれませんね。メチャ渋いモノクロのジャケットからはちょっと遠い、ライトな電子音を散りばめた現行R&B的なトレンド意識の一枚だったかと思います。ここ日本で国内盤が発売されたのも納得、しかしそこら辺の美メロ(甘メロ)主導のR&Bとは確実に一線を画す“何か”があった様に感じます。まぁでも若い世代にもすんなり受け入れられる一枚、Ne-Yo好きならまず購入で間違いなしで御座います。
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